この項ではインド音楽理論のリズムを解説いたします。
解説は北インド古典音楽について、です。南インド古典音楽もありますが、理論をよく知らないそれはまたの機会に…て事で。(逃げるな)
Act 1 : Taalについて
旋律にラーガがあるように、リズムにもタールというものがあります。ターラとも言います。どう日本語表記するかの違いだけです。要はリズムに対する決まり事とでも思ってください。インド音楽を演奏するには覚える事が多くて大変ですが、覚えてしまえば泥沼音楽人生も変わります(意味不明)。
時の流れを一定の間隔で刻む時、それはリズムになります(当たり前か)が、タールの本質もリズムである事に変わりはありません。歩く足音・時計の秒針を刻む音・手拍子・ドラムのビート・子作りに励む(黙れ)・・・(^^;)等、全てリズムですね(下品で失礼)。心臓の鼓動もリズムですから、人間、いや生物にリズムは必要不可欠といえるでしょう。
ではただ時を刻むだけではなく、周期をつけましょう。音楽で言う拍子ですね。4拍子とか7拍子とかありますが、この意味がわからない人はWEB検索でもして音楽自体をまず勉強してください(また逃避かよ)。
周期をつけると当然ループしますよね。タールにおいても例外ではありません。決められた拍数まで来ると拍子の先頭まで戻ります。何拍子であれど、この拍子の先頭を「Sam」と言います。このSamはかなり重要です。インド音楽で「う~ん」と感嘆する要素として大きな役割を果たしますので、必ず覚えておいて下さい。
何拍子であれ、拍子の頭がSamです。
Act 2 : 拍子のテンポと種類
何拍子で周期を取るかというのは定義があります。6拍子ならこのテンポ、10拍子ならこれ、といった具合です。テンポは一般の音楽では「♪=120」等と表されますが(この場合は1分間に4分音符を120回演奏する速さですね)、インド古典音楽では以下の様に表されます。
名称 | 速さ | 説明 |
Vilambit | 遅い | 速さは絶対的なテンポ値ではなくかなり感覚的なものです。比較するとVilambitの速さを倍にするとMadhyalaya・更に倍でDrutです。 |
Madhyalaya | 中間 | |
Drut | 速い |
実際に聞いて頂くと更に分かりやすいので、MP3を用意致しました。サンプルでは16拍子の周期でタブラが演奏しています。それぞれクリックしてみて下さい。
Villambit
Madhyalaya
Drut
次に拍子についてですが、何拍子かというのと後述するテカのバリエーション(ここではノリとでも理解して下さい)によってやはり名前が付いていますし、その拍子数によって使えるテンポ。以下の様に分類されます。この辺りはまる覚えするしか無いのですが、演奏する立場でもない限り何拍子という捉え方でも差障りは無いです。
古典音楽ではなくフォークソング(Dhun,Thumri,Bhajan等)で演奏するパターンもあります。それについては備考欄に明記しておきます。また以下に紹介しているタールが存在する全てではありません。もっとありますが調べきれないのでこれぐらいで堪忍してね。
拍数 | タールの名称 | 備考 |
16 | Teen-taal, Addha-taal | Classic |
16 | Chachar, Tilwada, Punjabi | Folk |
14 | Ada-taal | Classic |
14 | Dhamar, Deep Chandi, Jhoomar | Folk |
13 | Jai-taal | Cllassic |
12 | Ek-taal | Cllassic |
12 | Chautal, Gabra | Folk |
11 | Rudra-taal (choutarkisawari) | Classic |
10 | Jhap-taal | Classic |
10 | Surfakta, Sool | Folk |
9 | Matta-taal | Classic |
8 | Keher, Bhajan, Dhumali | Folk |
7 | Rupak-taa | Classic |
7 | Tevra | Folk |
6 | Dadra | Folk |
黄色の文字で表記してあるのがクラシック、つまり古典音楽で使うタール。そしてフォークとは地方それぞれに伝わる民謡デューンであったり、神への賛歌バジャンであったり。よく古典音楽の演奏後に続けて演奏します。まったりとしてまた違う趣があり、良い感じです。私も1つぐらいは演奏出来ればなぁと思っています。実は以前師匠に教えてほしいと頼んだのですが、「まだ早い、難しいから」と断られました。機会があれば、また師匠に頼んでみようっと。実は弾けないのではないかと疑っていたりする。追記:その後Dhunを習ったのですが、確かに難しいです。
表ではクラシックを演奏するものは最後に「Taal」(タール)が付いていますが、正確にはどのパターンにもタールは付けます。ただ私達はフォークで使う名称にはタールを付けない癖があるのでここでも省略しています。価値観を押付するつもりはありませんけどね。
Act 3 : Thekaについて
Act 2 で出てきたテカについて解説致します。テカを知るにはまずタブラの打音を知って頂く必要かがあります。
ご存知の様にタブラは両手で別々の打楽器を叩くのですが、その叩き方と両手の組み合わせによって色々な音色が出ます。その音色には名前が付けられていて、それを口頭で言ったり表記する事によって(これをヴォルといいます)タブラプレーヤーはどうフレーズを叩くのか察知する事が出来ます。
以下に各表記毎の名前と音色を用意しました。参考にして下さい。聞き分けられるようになればマニア完璧です。再生ボタン右の表記が音色の呼称になっています。
Dha
Dhi
Na
Ti
Ge
Trkita
Ta
Tun
Kat
他にもありますが面倒紹介しきれません(^^;)。だいたいイメージは掴めましたか??
さて、各タールはこの表記方を使って定義されますがそのパターンをテカと言います。各タールの基本リズムパターンという感じですね。実際はこれをベースに多少の装飾ぐらいはします。
例を挙げると、ティーンタール(16beat)のテカだとこうなります。
Dha Dhi Dhi Dha / Dha Dhi Dhi Dha / Dha Ti Ti Na / Na Dhi Dhi Dha
最終項に各テカのサンプルを用意しました。だから最後まで読んでね。なんて親切なんだろー。
Act 4 : Kali
カーリーと言います。危険なので決して「-」を抜かないように。インドの神様の名前でもありますね。
カーリーとは各タールに必ず1つ存在するもので、サムと同様非常に重要な役割を果たします。
テカの先頭は当然サムですね。これは共通ですが、カーリーの方はタール毎に指定された拍です。1拍の事を「マトラ」と言います。つまり各タールのカーリーのマートラーはそのまま覚えるしかないのですが、カーリーの時はバヤンが抜けるので低音が響きません。これが1つ聞き分けのコツです。
では最後に主要なタール毎のテカとカーリーを明記、更にMP3で聞ける様にしておきましたので、これで把握して下さい。テンポは基本的にMadhyalayaです。テカの中の太字はカーリーです。
インドクラシックで実際よく耳にするタール
Teen-taal 16 matra (4+4+4+4)
Dha Dhi Dhi Dha / Dha Dhi Dhi Dha / Dha Ti Ti Na / Na Dhi Dhi Dha
Rupak-taal 7 matra (3+2+2)
Ti Ti Na / Dhi Na / Dhi Na
Jhap-taal 10 matra (2+3+2+3)
Dhi na / Dhi Dhi na/ Ti Na / Dhi Dhi Na
Ek-taal 12 matra (2+2+2+2+2+2)
Dhin Dhin / DhaGe Trkita / Tu Na/ Ka Ta / DhaGe Trkita / Dhin Na
Addha-taal 16 matra (4+4+4+4)
Dha Dhi Dha / Dha Dhi Dha / Dha Ti Na / Na Dhi Dha
Matta-taal 9 matra (4+5)
Dhin Trkita Dhin Na / Tu Na DhiDhiNa DhiDhiNa
Jai-taal 13 matra (2+2+2+2+2+3)
Dhin Trkita / Dhin Na/ Ti Na / Kat Ta / DaGe Trkita / DhiDhiNaDhiDhiNa
Ada-taal 14 matra (2+2+2+2+2+2+2)
Dhin Trkita / Dhi Na / Ti Na / Ka Ta / Trkita Dhi / Na Dhi / Dhi Na
Rudra-taal (Choutarkisawari) 11 matra (2+2+2+2+3)
Dhin Trkita / Dhi Na / Ti Na / Ka Ta / DhiDhiNaDhiDhiNa
Keher 8 matra (4+4)
Dha Ge Na Tun / Na Kat Ta Na
Dadra 6 matra (3+3)
Dha Dhi Na / Dha Ti Na
Bhajan 8 matra (4+4)
Dhin Na DhiDhiNa / Dhin Na Ti TiNa
Chachar 16 matra (4+4+4+4)
Dha Dhi / Dha Dha Ti / Na Ti / Dha Dha DhiNaTrkita
Deepchandi 14 matra (3+4+3+4)
Dha Dhi / Dha Dha Ti / Na Ti / Dha Dha Dhi
Tilwada 16 matra (4+4+4+4)
Dha Trkita Dhin Dhin / Dha Dha Tin Tin / Ta Trkita Dhin Dhin / Dha Dha Dhin Dhin
では最後になりましたが、実際タールを演奏する時には単純にマトラを刻むだけではなく、色々と装飾するのが常です。でないとあまりにもシンプル過ぎて、実際のノリが出ません。但し装飾とは言っても基本は守られています。以下のファイルを聞き比べて下さい。例はVillambitのTeentaalです。
単純なテカ
装飾されたテカ
長々と明記しましたが、大体把握して頂けたかな?でもやっぱり実際に演奏を聞かないと漠然とした感じかも・・・いやー難しいですね。
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